Obsidian 同期方法の比較

Obsidianを複数端末で同期する4つの方法

保管庫は特別な形式を持たない、ただのMarkdownフォルダです。だから同期方法はObsidian自身に縛られず、iCloud DriveのようなOS標準の同期、有料の公式Obsidian Sync、Gitのようなバージョン管理、Syncthingのような自己ホスト型の同期ツールまで自由に選べます。ここでは4方式を費用・対応OS・コンフリクト時の挙動で比較し、GitとSyncthingは実際に2台のオフライン編集をぶつけて壊れ方を確かめました

ひとことで言うと

Apple製品だけで完結するならiCloud Drive(既定で動いており追加費用なし)で十分です。Windows/Androidもまたぐ、または公式のバージョン履歴やサポートが欲しいならObsidian Sync(有料)。Gitに慣れていて変更履歴もコミットとして残したいならGit(無料・要セットアップ)。クラウド事業者を介さずクロスプラットフォームで無料にしたいならSyncthing(無料・要セットアップ)。実測して分かった違いは「コンフリクト(競合編集)が起きたときの壊れ方」で、Gitはノート本文に衝突マーカーが直接挿入され手動解決が要り、Syncthingは自動で片方を残しもう片方を別ファイルとして保存します。

iPhoneから声で話してObsidianに残す最短の方法は、4方式の比較(プラグイン不要の手順つき)にまとめています。

4つの同期方法

どれも「保管庫フォルダの中身を複数端末で揃える」という同じ仕事をしますが、仕組みが違います。

☁️ iCloud Drive
Apple純正のファイル同期。保管庫フォルダをiCloud Drive内に置くだけで、Mac/iPhone/iPad間は追加設定なしに揃います。Windows/Android/Linuxには届きません。設定手順は別ページにまとめています。
🔄 Obsidian Sync(公式・有料)
Obsidian開発元が提供する公式サービス。E2E暗号化・Version History機能を持ち、全プラットフォームに対応します。料金は別記事で実測済みで、Standard/Plusどちらが要るかも別ページで整理しています。
🌿 Git
保管庫をGitリポジトリとして扱い、コミット・push・pullで同期する方式です。コミュニティプラグイン(Obsidian Git等)を使えば自動化もできます。全変更が履歴として残る一方、コンフリクト解決にはGitの知識が要ります。
🔁 Syncthing
オープンソースの自己ホスト型ファイル同期。クラウド事業者を介さず端末同士が直接(P2P)で同期します。無料・全プラットフォーム対応ですが、各端末にアプリを入れてペアリングする手間があります。

比較表

項目 iCloud Drive Obsidian Sync(公式) Git Syncthing
費用 無料 (既定のiCloud容量内) 有料 料金詳細 無料 (ホスト先の容量次第) 無料
セットアップの手間 ほぼ無し 低い (アプリ内で完結) 高い (リポジトリ・プラグイン設定) (端末ごとにペアリング)
対応プラットフォーム Appleのみ 全プラットフォーム 全プラットフォーム (モバイルはプラグイン次第) 全プラットフォーム
コンフリクト時の挙動 番号付き重複ファイル(Apple公式ヘルプ・Obsidianでの実機検証は未実施) 具体的な処理は公式ヘルプに記載なし。Version Historyで復元可能 本文に衝突マーカーを挿入(実測) 別ファイルとして両方保存(実測)
バージョン履歴 無し (Markdownファイル単体では) あり (Standard 1か月・Plus 12か月保持) あり (無期限・コミット単位) 既定は無効 (設定で有効化可能)
通信の暗号化 あり E2E暗号化 ホスト依存 (HTTPS/SSH) TLS・P2P直結
オフラインで書けるか

※ 「コンフリクト時の挙動」「バージョン履歴」の一部セルは検証範囲が異なります。詳しくは次章と、末尾の「検証環境と検証範囲」をご覧ください。

壊れ方を比べる — 実際にコンフリクトを起こしてみた

同期方式のカタログ的な比較はよく見かけますが、「同時に2台で編集したら実際どうなるか」まで手を動かして確かめた記事は多くありません。ここでは、この検証環境(Ubuntu 24.04・GitHub Actions)でGitとSyncthingを実際にセットアップし、2台の端末を模したフォルダにオフラインで別々の1行を追記してから同期を再開させました。iCloud DriveとObsidian Syncは、この環境にmacOS/iOSが無いため実機では再現できておらず、公式ヘルプの記載に基づいています。

実測 — Git

ノート本文に衝突マーカーがそのまま挿入される

中央リポジトリを1つ作り、2つのcloneをそれぞれ別端末に見立てました。両方を「オフライン」にしたまま同じノートの末尾に別の1行を追記してコミットし、順番にpushさせています。

# デバイスAを先にpush → 成功
$ git push origin master
   ba48c62..f0be52e  master -> master

# デバイスBをpush → 拒否される
$ git push origin master
 ! [rejected]  master -> master (fetch first)

# デバイスBがpull(マージを試み、衝突)
$ git pull origin master --no-rebase
Auto-merging Daily Notes/2026-08-26.md
CONFLICT (content): Merge conflict in Daily Notes/2026-08-26.md

# ノートの中身(Obsidianで開くとこのまま見える)
# 2026-08-26

- 08:00 起床
<<<<<<< HEAD
- 09:15 買い物メモ
=======
- 09:00 会議メモ
>>>>>>> f0be52e...

データは失われませんが、衝突マーカーの入った状態のノートがそのままObsidianで開けてしまいます。気づかずに読むと自分の文章だと誤読しかねず、解決には <<<<<<< / ======= / >>>>>>> の意味を理解したうえで手動編集し、コミットし直す必要があります。Obsidian Git のようなプラグインを使っていても、この最終的な衝突解決はGitの知識が要る作業です。

実測 — Syncthing

片方を残し、もう片方を別ファイルに退避する

同じ手順(apt経由でインストールしたSyncthing v1.27.2を2インスタンス起動し、ローカルのTCPで直接ペアリング)で試すと、Gitとはまったく違う壊れ方をしました。

# 同期再開後のvault-a
Daily Notes/2026-08-26.md
Daily Notes/2026-08-26.sync-conflict-20260825-212901-P2RW67Y.md

# 2026-08-26.md(採用された側)
# 2026-08-26

- 08:00 起床
- 09:15 買い物メモ(デバイスBで追記)

# 2026-08-26.sync-conflict-....md(退避された側)
# 2026-08-26

- 08:00 起床
- 09:00 会議メモ(デバイスAで追記)

Syncthingは自動でどちらか一方を元のファイル名のまま残し、もう一方を *.sync-conflict-日時-デバイスID.md という別のノートとして保存します。本文にマーカーが混ざることはなく、Git知識も不要です。ただし自動でマージはされないため、退避されたノートに気づかず放置すると、同じ話題のメモが2つのファイルに分裂したままになります。保管庫の検索結果に見慣れないファイル名が増える点は、運用上のノイズになり得ます。

公式情報・未検証 — iCloud Drive

Apple公式ヘルプ上は番号付きの重複ファイル

Apple公式のMacヘルプは、iCloud Drive上でドキュメントのバージョンが競合したとき、コンフリクト解決ダイアログで各バージョンを選んで保持でき、複数保持した場合は「Seven Wonders」「Seven Wonders 2」のように末尾に番号が付いたファイル名で残る、と説明しています。ただしこのダイアログはAppleの文書バージョニングAPIに対応したアプリ(Pages等)向けの挙動で、Obsidianのようにファイルシステムへ直接読み書きするアプリで同じダイアログが出るとは限りません。この環境にはmacOS/iOSが無く、Obsidian+iCloud Driveでの実機検証はできていません。

既存記事の「デイリーノートに入らない」章で扱った同期遅延(書き込みは即座でも反映まで数秒〜数十秒かかる)は、この競合とは別の現象です。両方を知っておくと、iCloud経由のトラブルの切り分けが早くなります。

公式情報・未検証 — Obsidian Sync

競合の解決アルゴリズムは非公開。頼れるのはVersion History

公式ヘルプ(obsidian.md/help/sync、2026年8月26日取得)には、同時編集時にどちらのバージョンを採用するかという具体的なアルゴリズムの記載が見当たりませんでした。一方で「Obsidian SyncをDropbox・Google Drive・OneDriveなど他のクラウドストレージと併用すると同期の競合(sync conflicts)が起きるおそれがあるため、保管庫をバックアップしてください」という公式の注意書きがあり、Obsidian Syncにも競合という概念自体は存在します。回復手段として明記されているのはVersion History機能で、ノート単位で過去のバージョンを一覧から選んで復元できます。保持期間はStandardプランで1か月、Plusプランで12か月、添付ファイルはプランによらず2週間です。

この環境では支払いが要るためObsidian Syncのアカウントを作れず、実際の競合再現はできていません。

共通の教訓

4方式のうち、実測できたGit・Syncthingはどちらもデータを失いませんでした。壊れ方の違いは「マーカーが本文に混ざるか」「別ファイルに分裂するか」で、どちらも気づかなければ静かに放置されるという点は共通しています。1つの保管庫を複数の同期方式で二重に同期しない(Obsidian公式が明示的に注意しているのもこの点)のが、いちばん確実な予防策です。

選び方の目安

🍎 Apple製品だけで使う
iCloud Driveで十分です。既にオンになっており、追加の費用もセットアップも要りません。
🖥️ Windows/Androidもまたぐ
公式サポートとバージョン履歴を技術知識なしで得たいなら Obsidian Sync。無料でよいならSyncthingが対抗馬です。
🌿 Gitに慣れている
保管庫の変化そのものをコミット履歴として残したいなら Git。コンフリクト解決を自分でできることが前提です。
🔒 クラウド事業者を介したくない
端末同士が直接同期するSyncthingが唯一の選択肢です。無料・全プラットフォームですが、各端末へのセットアップは自分で行います。

どの同期方式でも、保管庫はただのフォルダ

同期方式をどれにするかは、保管庫フォルダの「揃え方」を決めるだけの話です。Obsidian連携シンプルメモは、送信したメモを自分宛メールに残しつつ、iCloud Drive上の保管庫フォルダのデイリーノートへ直接追記します。iCloud Driveで同期している保管庫が対象で、GitやSyncthingだけで運用している(iCloud Driveを経由しない)保管庫フォルダは、現時点では対象外です。

どの同期方式でも、届く先は同じフォルダ

ダウンロードは無料。iCloud Drive上の保管庫フォルダを一度選ぶだけで設定は完了します。

App Store からダウンロード
App StoreダウンロードQRコード PCの方はスマホで読み取り

よくある質問

結局どれを選べばいいですか?
Apple製品だけで使うなら、既にオンのiCloud Driveがいちばん手間がありません。Windows/Androidも使う、またはバージョン履歴やサポートを公式に求めるなら有料のObsidian Sync。Gitに慣れていて、コミット履歴として保管庫の変化も残したいならGit。無料でクロスプラットフォームかつクラウド事業者を介したくないならSyncthingです。
Obsidian Syncを使わずに複数端末で同期できますか?
できます。保管庫は特別な形式を持たないただのMarkdownファイルの集まりなので、iCloud Drive・Dropbox・Google DriveなどOS標準のファイル同期や、GitやSyncthingのような汎用の同期ツールがそのまま使えます。Obsidian Syncは同期方法の選択肢の一つであって、必須ではありません。
同時に2台で編集するとどうなりますか?
方式によって壊れ方が違います。本記事で実測したところ、Gitは同じファイルに衝突マーカー(<<<<<<<)が直接書き込まれ手動での解決が必要でした。Syncthingは自動で片方を採用しつつ、もう片方を「sync-conflict」という別ファイルとして保存し、データの消失はありませんでした。iCloud DriveとObsidian Syncはこの環境(Linux・macOS/iOSなし)では実機検証できていません。
複数の同期方法を同時に使ってもいいですか?
Obsidian公式ヘルプは、Obsidian SyncをDropbox・Google Drive・OneDriveなど他のクラウドストレージと併用すると同期の競合(sync conflicts)が起きるとして、保管庫のバックアップを推奨しています。二重の同期の仕組みを同じフォルダに重ねがけするのは避け、1つの保管庫には1つの同期方法にとどめるのが安全です。
Obsidian Syncで間違って上書きしたら元に戻せますか?
公式ヘルプによると、Version History機能でノートごとの過去バージョンを閲覧・復元できます。保持期間はStandardプランで1か月、Plusプランで12か月、添付ファイルは2週間です(2026年8月26日に公式ヘルプで確認)。復元はファイルを選んで「Open version history」から行います。
検証環境と検証範囲

検証日: 2026年8月26日 / 環境: Linuxデスクトップ(Ubuntu 24.04・GitHub Actions実行環境)。実測(このセッションで実際に動かして確認): Git 2.x — 中央リポジトリ1つと2つのcloneでオフライン同時編集→pushの拒否→pull時のマージ衝突→本文への衝突マーカー挿入までを再現。Syncthing v1.27.2(apt経由でインストール)— ローカルTCPで直接ペアリングした2インスタンス間で同じシナリオを再現し、sync-conflict-*.md ファイルの生成を確認。公式情報に基づく記載(未検証): Obsidian Syncのバージョン履歴の保持期間・他クラウド併用時の注意(obsidian.md/help/sync を本セッションから直接取得・2026年8月26日)、iCloud Drive上のドキュメント競合時の番号付きファイル名(Apple公式Macヘルプ)。この環境で検証できなかったこと: iCloud DriveとObsidianの組み合わせでの実際の競合挙動(macOS/iOSが無い)、Obsidian Syncでの実際の競合再現(有料サービスのため未契約)。Obsidianのバージョンや各ツールの挙動は将来変わる可能性があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。

関連ページ

参考文献